石持浅海『風神館の殺人』- 復讐に集まった者たちが次々に殺されていく密室ミステリの秀作

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欠陥商品を販売し、多くの人々を不幸に追いやった株式会社フウジンブレード。

復讐を遂げるために、恨みを抱く者たち10名が保養所「風神館」に潜入した。

彼らは協力体制を敷き、綿密な殺害計画を練り、まずは一人目、開発部長の笛木を浴室で自殺に見せかけて殺した。

続いて殺すのは、専務の西山と社長の中西、のはずだった。

しかし計画実行の集合時刻になり、食堂に集まった彼らが見たものは、仲間の一人が死んでいる姿だった。

一体誰が殺したのか。この中に裏切り者がいたのか、それとも他の人間が潜んでいたのだろうか?

残る9名は、疑心暗鬼にかられながら館内を確認するが―。

復讐者が次々に殺されていく、戦慄の密室ミステリー!

目次

殺しに来たら、殺される側に

タイトル内の「館」と「殺人」というワードを見れば、ミステリー好きの人であればピン!と来るでしょう。

『風神館の殺人』は、閉ざされた館の中で巻き起こる、連続密室殺人事件を描いた物語です。

ただ、よくある密室ミステリーと違っているのは、館内にいるメンバー10名が全員人殺し、という点です。

正確にはこの10名は、フウジンブレードという会社に恨みを持っており、復讐のために手を組んで幹部を殺そうとしています。

そして会社の保養施設「風神館」に潜入し、最初のターゲットである部長を殺害したところ、仲間が一人、また一人と、何者かに殺され始めたのです。

殺しに来たはずが、逆に殺される側になるという皮肉な展開が興味深いですね!

そしてさらに面白いことに、生き残ったメンバーは、お互いに疑心暗鬼になります。

館内には仲間しかいないので、その中の誰かが犯人だろうと考えたのです。

しかも自分たちは既に人を殺しているので、警察に頼るわけにはいきません。

加えて、復讐という強い意志があるため、その場から逃げ出すこともできません。

つまり復讐者たちは、お互いに疑い、ビクビクと恐れながらも、協力して人殺しを続けねばならないわけです。

もう、この緊迫感がたまりません!

それぞれが、疑いと恐怖心、復讐心との間で揺れ続け、そのストレスが行間から溢れるように伝わってきます。

クローズド・サークル(閉鎖空間)やサスペンスが好きな方には、『風神館の殺人』は間違いなく面白く読める作品です。

推理しながらの心理戦

『風神館の殺人』のもうひとつの見どころは、復讐者たちによる推理です。

犯人が一体誰なのか、なぜ犯行に及んだのか、いつどうやって殺したのかを、生き残った者同士で推理していくのです。

このパートが実に濃厚で、読み応えたっぷり!

なにせ復讐者たちは、お互いに疑っているわけですから、単なる推理では済まないのですよ。

仲間内にいるであろう犯人を炙り出すために、カマをかけたり誘導尋問をしたりと、熾烈な心理戦が繰り広げられます。

下手な答え方をすれば犯人呼ばわりされかねませんし、もちろん黙ったままでも怪しまれます。

そのため慎重に受け答えをする必要があり、この駆け引きに読み手もハラハラドキドキ。

そのうえ殺人が次々に起こるので、ますます手に汗握る展開に!

犯人だと思っていた人が殺されると、そのたびに推理はやり直しになります。

しかも人数が減った分だけ犯人を絞り込みやすくなるので、生き残った者たちは一層強い猜疑心をもって推理することになるのです。

ますますどんどん推理と駆け引きとが激しくなるので、読み手の緊張感やテンションも高まりまくりです。

この流れは終盤まで続き、人数がかなり絞られたところで、一気に真相が明かされます。

これがまた意外すぎる真相で、予想を見事に裏切る筋書きには、感動を覚えるほど!

その後迎える結末もなんとも後を引くもので、その後の展開を読者にたっぷり想像させてくれるところが良かったです。

この感覚は、実際に読んでみて初めてわかると思うので、ぜひご一読を!

目新しい密室ミステリー

ただでさえ緊迫感のあるクローズド・サークル内での出来事が、復讐心や心理戦によって、一層サスペンスフルに描かれている本作。

作者の石持浅海さんは、もともとクローズド・サークルに大きなこだわりのある作家さんです。

具体的には、

・特殊な舞台設定を用意する
・その舞台ならではの事件を起こす
・登場人物が議論することで真相が明らかになっていく

という流れを意識して、執筆されているそうです。

こうすることで、他の密室ミステリーとかぶらない作品を目指しているのだとか。

『風神館の殺人』は、まさにそのこだわりを形にしたような作品です。

まず、クローズド・サークルの設定からして見事!

孤島のような単なる閉鎖空間ではなく、登場人物たちが殺人を犯したがゆえに、外部(警察など)を頼ることができないという、非常に特殊な閉鎖空間です。

起こる事件も、人殺しが集まっているからこその恐ろしさがありますし、推理パートも、仲間同士で疑い合い追い詰め合うという、これまた特殊な流れ。

もう本当に、他の密室ミステリーとはかぶりようのない、石持浅海さんの狙いがギュッと詰め込まれた作品ですよね。

この独自性に、日頃から多くの密室ミステリーを読んでいる方でも目新しさを感じると思います。

逆に、密室モノにあまり馴染みのない方も、本書をきっかけにハマってしまうかもしれません。

ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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