ドキュメンタリー番組の視聴者から、とあるレンタルビデオ店に「見たら死ぬビデオ」があるという情報が届く。
番組スタッフが真偽を確かめに行くと、店長は存在をあっさり認め、見せてくれた。
それは簡単なホラードキュメンタリーだったが、奇妙なことに合間に合間に遺影らしき映像が挿し込まれていた。
店長が言うには、おそらく誰かがイタズラで上書きしたものであり、そこから「見たら死ぬビデオ」と噂されるようになったらしい。
陳腐なオチに拍子抜けするスタッフだったが、その後ディレクターやカメラマンなど関係者が次々に死亡していく。
恐怖を感じたプロデューサーは、やむなくこの番組の放送を断念。
しかし時を経て、再度このネタを洗い直すことになり―。
読んで、聴いて、見て味わう恐怖の絶頂
『フェイクドキュメンタリーQ』は、YouTubeで公開されている同名のホラーモキュメンタリー番組を書籍化したものです。
番組のコンセプトは、ワケあってお蔵入りした放送や、個人が偶然撮影したヤバい映像などの再編集。
いずれもフィクションですが、そうとは思えないリアリティがあるところが魅力です。
また基本的にオチはなく、お蔵入りした本当の理由など、真実が明かされないところもミソ。
だからこそ視聴者は、「一体どういうことだったんだ?」と考察したくなり、食い入るように視聴してしまうのです。
その結果、『フェイクドキュメンタリーQ』はチャンネル登録者数30万を超える人気番組に。
大きな話題となったことから、こうして書籍化されました。
書籍版には、特に再生回数の多い6作品が、ルポタージュ風の小説として収録されています。
動画版にはなかったネタが多数追加されており、考察を一層楽しめるようになっている他、随所にあるQRコードから音声や動画のコンテンツに飛べるようにもなっています。
読んで怖くなり、聴いてますます怖くなり、見て恐怖の絶頂に至るわけですね。
また新作書き下ろしも2編あり、動画のファンの方にとっても充実の内容です。
各話のあらすじと見どころ
『封印されたフェイクドキュメンタリー~続報~』
「見たら死ぬビデオ」の真相を探るモキュメンタリー。
随所に挟まれている遺影が怖い!
突然こんなのが出てきたら、たとえイタズラだろうと震え上がってしまいます。
しかも関わった人が次々に死んでいくし、人が死ぬたびに遺影の数が増えていくので、イタズラとは到底思えません(泣)
『BASEMENT~branch~』
あるエレベーター内の監視カメラの映像です。
一人の女性が10階から乗り、階下に移動する様子が映っているのですが、奇妙なことにエレベーターはいつまでも止まらず、延々と下降を続けます。
女性はパニックになり、ボタンを押しまくったり、スマホで外部と連絡を取ろうとしたり、監視カメラに訴えかけたりするのですが、状況は全く変わらず。
このエレベーターは、一体どこへ向かっているのでしょうか…。
『SANCTUARY~ある少年の自由研究~』
車載カメラの録画らしき映像です。
男性二人がひどく焦りながら山道をバック走行し、何かから逃げようとしています。
焦るあまり誰かを轢いてしまったり、全身白ずくめの人物に追い詰められたり、意味不明の4桁の数字が延々と聞こえてきたり、とにかく状況がまるで見えなくて恐怖!
『ノーフィクション~岡崎範子の謎~』
35年間引き籠っている岡崎範子に密着取材する番組。
両親は既に亡く、納骨をしていないのか、家には遺骨が置かれています。
さらに生肉のような質感のマスクがあったり、お札があちこちに貼られていたりと、異様な雰囲気。
彼女がこれほど長く家から出なかった理由は一体…。
『キムラヒサコ~厄災~』
書籍用の書き下ろしです。
緊急放送で、キムラヒサコの遺体があがったことが知らされます。
ただちに避難すること、決して目を合わせないこと、厄災の方角なども指示され、人々は逃げまどいます。
キムラヒサコとは一体何なのか、底知れない恐怖と不安感がすごい!
『オレンジロビンソンの奇妙なブログ~ハッピーマザーズダイアリー~』
写真加工業者のもとに来た異常な依頼。
焼けて崩れたような女性の顔写真を、幸せそうな家族の写真に合成してほしいというのです。
この依頼は何度も来て、やがて業者はノイローゼになり…。
話の流れもですが、写真がページ内に掲載されており、視覚的にも怖すぎる作品です(泣)
『フィルムインフェルノ~いくつかのピース~』
海に遊びに来たカップルが、洞窟に入って行方不明になるまでの記録映像。
洞窟内の怖さがすごくて、針金で作られた人形があったり、突然クラシック音楽が響いてきたり、それがいつの間にか無数の悲鳴に代わっていたりと、めちゃめちゃホラー!
『池澤葉子失踪事件~母の印影~』
こちらも書籍版の書き下ろし。
ある男性が、幼い頃に失踪した母親の情報を求めていたところ、泣きわめく女性をアップで映したビデオが届けられます。
さらに怪文書や地図、写真なども届き、男性はそれらの意味を探ろうとするのですが…。
怖さの中に謎解き要素もあり、考察好きにはたまらない作品です。
モキュメンタリーホラー好きは絶対読むべき
以上8作品をご紹介してきましたが、どれも設定といい、展開といい、謎と恐怖に満ちていましたね。
そもそも表紙からして怖くて、人の顔を描いた紙がグシャグシャに丸めてあるのですが、その顔がとにかく不気味。
うつろな表情で読者の方をジッ見ているので、目を合わせたくなくて、顔をそむけたくなります(泣)
表紙をめくると、これまた気味の悪い画像のオンパレード。
「見たら死ぬビデオ」のポップ、遺影、異様な白装束、歪んだ顔写真などなど、たくさんの画像が掲載されており、怖くて正視しづらいです。
さらにQRコードで飛んだ先が、もうヤバすぎ!
わけのわからない呟き、正気とは思えない発言、悲鳴などなど、こちらのメンタルまでやられてしまいそうになります(泣)
怖いものが苦手な方は、要注意ですよ。
逆に、モキュメンタリーホラーがお好きな方であれば、かなり楽しめると思います。
特に、背筋さんの『近畿地方のある場所について』や、梨さんの『その怪文書を読みましたか』がお好きな方には特におすすめです!