阿津川辰海『バーニング・ダンサー』- 警察の特殊能力チームが猟奇的殺人犯とバトル!

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2年前に謎の隕石が落下した時、世界に異変が起きた。

それまでは普通に暮らしていたはずの100人が、突如として特殊な能力に目覚めたのだ。

「放つ」「伝える」「硬くなる」など、それぞれに異なる能力を持つ彼らは、「コトダマ遣い」と呼ばれ、畏怖された。

刑事の永嶺スバルもコトダマ遣いの一人で、「入れ替える」の能力を持っていた。

ある日スバルは、警視庁公安部で新設されたコトダマ遣いのチーム「SWORD」にスカウトされ、班長として所属することに。

「SWORD」に与えられた最初の任務は、ある奇妙な事件の捜査。

全身が炭化するほど焼き尽くされた遺体と、体中の血液が沸騰した遺体が発見され、原因を突き止めるというものだ。

どちらも人間業とは思えず、コトダマ遣いによる犯行と考えられた。

スバル率いるコトダマ遣い集団は、この猟奇的なコトダマ事件をどう解決させるのか?

目次

異能を駆使した犯罪・捜査・バトル

『バーニング・ダンサー』は、コトダマ遣いと呼ばれる能力者たちの戦いを描いた特殊設定ミステリーです。

警視庁「SWORD」のメンバーが悪と対峙する物語なので、一種の警察小説とも言えますね。

魅力は、なんと言ってもコトダマの種類が豊富なところ!

この世界に100人いると言われているコトダマ遣いは、能力が全員異なっており、それぞれとても個性的なのです。

たとえば主人公スバルの能力は、「入れ替える」。

指をパチンと鳴らすと、物体の位置を瞬時に入れ替えることができます。

ペンなどの小物はもちろん、人と自分の位置を入れ替えたり、応用すれば味方と敵の位置さえも替えることが可能という、とても便利な能力です。

また、「SWORD」の課長・三笠は未来の出来事を「読む」能力を、交番勤務だった坂東は電撃を「放つ」能力を、交通課にいた双子の姉妹は、風を「吹く」能力と思念を「伝える」能力を持っています。

このように、能力は多種多様。

工夫して使えば様々な戦略ができそうで、ワクワクしますね!

そして興味深いことに、なんと敵側もコトダマ遣い!

最初に起こる事件では、電力会社の社員二名が殺されるのですが、一人は全身が炭になるまで焼き尽くされ、もう一人は全身の血を沸騰させられて死んでいました。

こんなことが簡単できるのはコトダマ遣いしかいないだろうと思っていたら、案の定ホムラという「燃やす」の能力を持つ男が犯人だと、序盤で情報が出されます。

そしてその相棒のスズキも、何やら事情を抱えているようで、胡散臭い。

このように『バーニング・ダンサー』では、敵も味方もこぞって能力者。

一般的な警察小説ではまずお目にかかることのない、奇想天外な異能犯罪と異能捜査、異能バトルを楽しめます。

激アツの心理戦とどんでん返し

それぞれのコトダマに「限定条件」が決められているところも、『バーニング・ダンサー』の見どころのひとつです。

限定条件とは、個別の発動条件のこと。

コトダマは、いつでもどこでも自由に使えるのではなく、発動には条件が必要なのです。

たとえばスバルの場合は、「半径5メートル以内で指を鳴らす」ことが条件。

指を鳴らすと、自分の半径5メートル以内にある物体の位置を入れ替えることができますが、指が滑って鳴らせなかったり、対象から遠く離れていたりした場合は、能力が発動しないわけですね。

そのため能力をうまく活用して戦うには、条件をしっかり把握しておくことが大事です。

肝心な時に条件の問題で能力が発動しなかったら、戦況がヤバくなりかねないからです。

逆に、敵の条件も把握しておくと、有利に戦えます。

たとえば手で触れると「腐る」というコトダマ遣いと戦う場合、「手」さえ封じてしまえば安心ですよね。

このように「SWORD」と犯人との戦いでは、情報や戦略が大きなキモとなっています。

いかに自分の条件を隠し、相手の条件を見極めるかが、勝敗を決します。

そのため洞察や推理、時には偽情報を使った化かし合いも必要。

この腹の探り合いによって、バトルはかなり白熱!

手に汗握りながらの心理戦を楽しめますよ〜。

さらに終盤になると、偽情報で巧みに隠されていた真相が次々に明かされていくのですが、これがもう凄まじくて!

今まで明かされてきた能力が、実は真っ赤な嘘で、全然別の能力だったとか。

ある重要人物が、実はとんでもない正体を隠していたとか。

もうビックリの連続で、展開も激しく二転三転。

この怒涛のどんでん返しも、『バーニング・ダンサー』の大きな魅力です!

設定もバトルも大胆な傑作

阿津川 辰海さんといえば、大胆なトリックで知られる作家さんですが、いやはや今回もやってくれました。

まず、警察小説×異能バトルというジャンルからして大胆ですよね。

渋くて硬派なイメージのある警察小説と、少年漫画やラノベで人気の異能バトルとは、一見テイストが全然違って見えますが、敵をいかに追い詰めるかという頭脳プレイにおいて、実はめちゃくちゃ好相性!

阿津川先生、よくぞ掛け合わせてくれました!

そしてその頭脳プレイもまた、とてつもなく大胆。

「ここでこの能力を使うのか!」

「まさかこんな使い方があったなんて!」

と、読者はしきりにハッとさせられます。

連係プレイや、ここぞという時の大技もあり、使い方が本当に巧妙で面白い!

主人公スバルの「入れ替える」も良いですが、個人的には無生物の声を「聞く」能力に興味津々でしたね~。

さらに上で述べたような心理戦も加わってくるので、もう出し抜いたり出し抜かれたりの攻防に、読者はワクワクしまくりです。

さらにこの作品、ドラマ性も十二分にあります。

スバルを始めとするメインキャラクターが深掘りされており、背負っている過去や、秘めてきた思いなどが描かれています。

その分物語に厚みがあり、単なるバトル物では終わらない情緒があるところがまた良き!

ぜひシリーズとして今後も続いてほしい、近年稀に見る傑作でしょう。

自信をもっておすすめできる一冊です!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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