麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』- 発表当時から話題騒然の超問題作が新装改訂版で登場

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真宮和音という美少女の魅力に取りつかれた6人が共同生活を営んだ「和音島」の生活は、当の和音の死で解散となっていた。

20年という歳月が過ぎたこの夏、故人をしのび和音島に集まった数人と、取材を頼まれた雑誌記者・如月烏有。

真宮の死後自殺した武藤は、和音が主演の幻の映画「春と秋の奏鳴曲」を撮影していた。

そして、真夏に大雪が降った日、ある一つの首なし死体が発見される。

雪のため“密室”となった現場、何者かに壊された電話、そして武藤の書いていたという「春と秋の奏鳴曲」続編、「黙示録」とは?

如月烏有の背負った罪とは?

孤島に閉じ込められ疑惑と不信にさらされた登場人物たち、やがて起こる惨劇。

ミステリの枠組みに疑問を投げかけた、1993年発売の問題作が復刊!

目次

読者に解釈をゆだねる絶版ミステリが新装で復活!

20年前の故人をしのぶ人々、真夏の雪や断崖のテラスに、周囲との連絡を絶たれた孤島と首なし死体。

伝統的な本格ミステリの教科書と言ってもよいほど舞台の整えられている本作ですが、その結末から1993年の発売以来賛否両論を呼んできました。

大胆で鮮やかな足跡トリックなど、本格ミステリとしての魅力にあふれる本作ですが、結末でまさに読者をアッと言わせる展開が登場。

出版年が古く絶版が続いていたことから、手に入りにくいミステリとされてきましたが、今回新装版として復活し、さらに多くの人の目に触れるようになりました。

事件が発生して名探偵が登場し、謎を全て解決してくれる……、そんな本格ミステリを楽しんできたけれど、何か他に一捻りのある作品を読みたいという、“ミステリ上級者”の方にぜひ読んでいただきたい作品です。

シリーズ随一の難書、しかしシリーズ読者にとっては“ご褒美”も

チート級の“銘”探偵、メルカトル鮎シリーズの一つである本作。

難解でミステリ上級者向けという性格でありながら、シリーズ前作『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』を読んだ人へのご褒美的な描写も欠かしません。

約700ページという大ボリュームの本作ですが、前作を読んでみてその雰囲気や文体が自分に合っていると感じた人は、読んでみて決して損はないでしょう。

反対に前作を読んだことがないという人は、始めに前作を読んでから本作を読んだ方が、雰囲気や小ネタをより一層楽しめるはずです。

メルカトル鮎シリーズの中でも随一の難しさを誇ると言われている本書。

その魅力を充分に理解するためには、やはりシリーズ初期作品から読むのが良さそうです。

内容の難解さから人に勧めにくいという声も多い本作ですが、この不思議な読書体験・読後感が癖になるという方は少なからずいらっしゃるでしょう。

・コアなミステリファンはぜひ読んでみてほしい!

1991年に、本作のシリーズ前作とも言える『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューした作者・麻耶雄嵩。

デビュー当時から問題作を一貫して書き続けてきたという独特の作風を持ち、作家仲間やコアなミステリファンから高い評価を受けてきています。

メルカトル鮎シリーズには短編集もあり、シリーズを通してたくさんのファンがついています。

近年ドラマ化された貴族探偵シリーズの作者と言えばピンと来る方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本作はシリーズ随一の難易度であり、既存の枠組みにとらわれずに斬新に大胆に執筆された点が高評価も受け、反対に厳しい批評も受けました。

そういった経緯から、ハッキリ言って本書は「万人におすすめできる」というタイプの本ではありません。

しかし、せっかく新装改訂版が出版されたのですから、気になっていたけど買えなかったという人にとっては大きなチャンス。

この機会にぜひ手に入れてほしいなと思います。

また、メルカトル鮎の登場するシリーズには前作と本作の他にも多数出版。

メルカトルと美袋のための殺人(1997年出版)』や『メルカトルかく語りき(2011年)』といった短編集を始め、大きな読み応えを提供してくれる長編『痾』や『鴉』も充実。

2021年9月には新作の短編集『メルカトル悪人狩り』が発売されており、これからも目の離せない作家と言えます。

さらに同シリーズ以外にも先ほど紹介した貴族探偵シリーズや2015年の本格ミステリ・ベスト10の1位を獲得した『さよなら神様』を含む神様シリーズ、ファンも多い『木更津悠也シリーズ』など、とにかく作品数の豊富なこの作者。

本当におすすめの作家さんなので、たまには作者縛りで読んでみてはいかがでしょうか!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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