『邪教の子』- ホラーの名手、澤村伊智さんが描く戦慄のサスペンススリラー。

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とあるニュータウンに引っ越してきた一家。

両親と一人の娘という構成だが、どうやら親は新興宗教の信者であり、娘は学校にも行かせてもらえず、虐待を受けているらしい。

その家族は信者ということで当然ご近所から浮きまくっていて、どうも様子がおかしい……。

ニュータウンに住む主人公の慧斗は、怪しい家族からその娘を救出すべく、とある計画を立てた。

そして視点と年代が変わり、事態は読者の思わぬ方向へと展開を見せ始める。

タイトルの「邪教の子」が意味することとは?邪教の子とは誰のことを指すのか?

宗教とは、人が何かを信じるということはどういうことなのか?

どんでん返しに次ぐどんでん返しで誰にも予測できないラストに、読み手は驚きと戦慄を隠せない!

目次

人気サスペンスホラー作家と「カルト宗教」という最強の組み合わせ!

本作『邪教の子』の作者・澤村伊智は、大ヒットホラー小説・『ぼぎわんが、来る』でデビューを果たした、ホラー・サスペンスの名手。

ぼぎわんが、来る』では恐怖そのものを題材とし、恐怖は妖怪や異物それ自体ではなく、それを怖がり遠ざける人間の心理が生むものと定義して、恐怖の実態を書き記しました。

この『ぼぎわんが、来る』は映画化もされ、作者が一躍ホラー作家の一人として認識されるきっかけをもたらしています。

そんな作者が今回目をつけたのが、特殊な信仰や習慣を持ち時に恐怖や嫌悪の対象として見られやすい「カルト教団」とその信者たち、そして彼らを取り巻く周囲の環境です。

恐怖そのものをえがく作者と、何かと怖い印象を持たれがちなカルト教団という存在……この組み合わせだけで大いに興味をそそられるでしょう。

しかし、本作のジャンルはあくまでホラーではなくミステリー。

物語が進むにつれて読者の目に見えていた景色は二転三転し、まさに「何を信じれば良いのか」といった状況に!

登場人物みんながみんなどこかおかしい、そんな事態に震えつつも、先の気になる展開に読者は手を止めることができないでしょう。

怖いミステリーやどんでん返しが好きな方におすすめしたい作品です。

圧倒的な構成力で繰り出される、驚愕の結末

構成の見事さに定評のある作者ですが、今回もその例に漏れず、練りに練られた構成で読者を翻弄します。

今作の構成は大きく分けて、主人公・慧斗の手記による第一部とカルト教団の取材に乗り込むTVディレクターの第二部という形を取っています。

読んでみればわかるのですが、第一部の手記の時点で半端ではない不穏な空気が読者を包み込み、一気に物語に取り込みます。

ボタンを掛け違えたような小さな違和感が積み重なり、物語は第二部へ、それでも違和感はぬぐい切れません。

終盤になりその違和感が解決されるにつれて、読者は驚きの真相を知ることになります。

第一部と第二部で視点も場面も全く切り替わっていて、読者は終盤まで物語の全体像を掴めず、形容しがたい恐ろしさ・気味の悪さに囚われるでしょう。

ぼぎわんが、来る』でも高く評価された構成力が、今作にも生かされています。

怒涛の展開で気軽に読める!ホラーとミステリーどちらも楽しみたい方に

デビュー作後も次々とホラー小説を刊行し続け、大人気ホラー作家の名にふさわしい功績を残している作者。

この作者特有の、構成と文章力によってじわじわと読者を恐怖の渦に落とし込むホラーが好きな方には、今作『邪教の子』をはじめ彼の著作はドはまりすること間違いないでしょう。

そこにカルト教団という題材もあいまって、怖いのに先が気になってどんどん読み進めてしまうということに。

カルト教団の不穏なイメージ、登場人物それぞれの価値観の違いといった要素が絡み合い、作品の不気味な雰囲気と複雑な全体像をつくりあげています。

構成の特殊さや次から次へと訪れるどんでん返し、意外すぎるラストから、作者のファンの中でも評価が分かれる今作。

シリーズものではなくこれだけで読めるので、まだあまりこの作者の作品を読んでいないという方にはかえっておすすめかもしれません。

また、作者の作品全体を通して、エンターテインメント性が高いというのも特徴の一つであり、この作品もその厚さに反して読みやすいという評価も。

読書を通してホラーやミステリーを心から楽しみたいという方におすすめということが言えます。

この作品を読んで、作者の用意した恐怖を存分に楽しめたという方は、ぜひ他の作品にもチャレンジしてみてください!

確実に、今後もチェックしていきたい作家さんの一人です。

ぜひ読んでみてくださいな!(*・ω・)ノ

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。
ミステリー小説が大好きです。

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