あの明智恭介にまた会える!?
神紅大学3回生、ミステリ愛好会の会長にして名探偵、いやトラブルメーカーと言うべきか?
とにかくミステリーが大好物で、古今東西のミステリーを読み漁り、日々推理力を鍛え、大学内で事件が起こっては首を突っ込み、華麗に解決しつつも、周囲との諍いで余計なトラブルを引き起こす厄介な迷探偵、これが明智恭介だ。
彼は映画研究部の夏合宿に同行した時に事件に巻き込まれ、あえなく「退場」し、二度と活躍の場を得られなくなった。
しかし「退場」する前の明智には、知られざる逸話がまだまだある。
名推理から迷推理まで、さらに恥ずかしすぎる黒歴史も加えた、全5つのエピソード。
過ぎし日の明智の素顔を堪能できる、珠玉のミステリー短編集が、今ここに!
明智恭介の過去を描いた全5編
『明智恭介の奔走』は、シリーズ累計100万部を突破し、映画化もされた大人気ミステリー『屍人荘の殺人』のスピンオフ作品です。
『屍人荘の殺人』を読んだ方なら、大興奮すること間違いなし。
なぜなら、神紅のホームズこと明智恭介が主人公だから!
明智恭介と言えば、ミステリー好きが高じて、身の回りのあらゆる事件に首を突っ込んでは色々とやらかして、だけど案外キレ者で洞察力に優れている、ドジっ子属性持ちの探偵役。
妙な方向にアクティブな厄介者ですが、なぜか憎めない愛嬌のあるキャラクターです。
『屍人荘の殺人』では物語序盤で悲劇に見舞われてしまい、二度と華々しい活躍を望めなくなったので、残念に思っていた読者も多いはず。
それが本書『明智恭介の奔走』では、再び読者の前に姿を現してくれるのです!
これはめちゃめちゃ嬉しいですね~!
といっても「復帰」したわけではなく、読者がお目にかかれるのは「退場」する前の姿。
つまり本書は、『屍人荘の殺人』の前日譚的な物語ということですね。
時期としては『屍人荘の殺人』のワンシーズン前、具体的には、新入生の葉村がミステリ愛好会に入会してから2週間後くらいに当たります。
まだ屍人荘で「あんな目」に遭うなんて思いもよらなかったであろう、元気いっぱいで余裕綽々な明智恭介を、本書では連作短編としてたっぷり堪能できますよ〜。
ファンなら涙を滲ませて飛びつかずにいられない一冊です!
各話のあらすじと見どころ
『最初でも最後でもない事件』
入会したての葉村と一緒に、日々の学食メニューを当てて推理力を鍛えていた明智。
要は暇だったわけですが、そんな明智のもとに、ついに事件調査の依頼が来ます。
コスプレ研究部に侵入した空き巣が、何者かに殴られて気絶している間に身ぐるみ剥がされたというのです。
空き巣犯が服を盗まれるなんて、あべこべですよね。
一体誰が何の目的で?
ドジな印象だった明智が、実はバリバリにデキる男、…に見えたり見えなかったりする、ちょっぴりシニカルな楽しいエピソードです。
全5話の中で、最もページ数が多く、その分読み応えがあります。
『とある日常の謎について』
舞台は寂れた商店街で、喫茶店の店主が語り手です。
ボロボロのビルが破格の値段で買い取ってもらえたという話を聞いて、いぶかしく思っていたところ、明智が謎解きをすることに。
レトロな商店街で良くも悪くもアクティブに動く明智は、きっと高齢の商店街メンバーにはキラキラと眩しく映ったことでしょう。
人情味あふれる、読後感の気持ちいいお話でした。
『泥酔肌着引き裂き事件』
待ってました、明智の黒歴史の大暴露エピソードです!
ある日、酔っぱらった明智が目覚めえると、なぜかパンツをはいていませんでした。
でもズボンははいているし、おかしなことにパンツはビリビリの状態で玄関に。
明智は一体誰にパンツを脱がされて、破かれた上、ズボンをはかせてもらったのでしょう?
一見バカミスだけれど、途中から意外とロジカな展開になる侮れない一作です。
『宗教学試験問題漏洩事件』
教授の部屋から盗まれた期末試験の謎を追う物語。
『屍人荘の殺人』の序盤で、タイトルだけチラッと語られていた事件ですね。
犯人の正体や盗みの手段がわかりそうでわからないので、登場人物も読者も一緒になってヤキモキしてしまう感じが楽しいですね。
最後には、「神紅のホームズ」という明智の自称に納得できるようになるかも?
『手紙ばら撒きハイツ事件』
明智がまだ葉村と出会う前、探偵事務所でバイトをしていた時の物語。
あるハイツに不気味な手紙がバラ撒かれ、その犯人を事務所の所長と明智が探します。
薄気味の悪い文面に、妙に規則的な犯人の動き、そして叙述トリックまであって複雑です。
だからこそ明智の推理と活躍が光り、最後までワクワクしながら読めます。
読めば読むほど明智恭介の魅力がわかる!
『屍人荘の殺人』のスピンオフ作品ですが、雰囲気はガラリと変わっていて、こちらはパニックホラー要素一切ナシの日常系ミステリー。
そのため派手な展開はないものの、その分明智のキャラクターにスポットを当て、しっかり深掘りする内容となっています。
明智の性格や探偵としての能力はもちろん、趣味や好み、ルーツなどが描かれているので、読めば読むほど読者は明智の魅力がわかり、読者は引き込まれていきますよ。
特に『泥酔肌着引き裂き事件』は、明智の意外な(でもないか?)な醜態に、ニマニマが止まらなくなること請け合いです!
ただ、既に『屍人荘の殺人』を読まれた方はご存知だと思いますが、この先の明智に待っているのは阿鼻叫喚の地獄です。
もう確定している未来なだけに、本来は明るくコミカルなはずの本書が、時折どうしようもなく悲しく見えてきます。
特に『宗教学試験問題漏洩事件』なんて、舞台は7月なのですよ。
『屍人荘の殺人』が8月ですから、明智の悲劇まであと1ヶ月。
そう考えると、あまりにも寂しくて……。
作者の今村昌弘さんには、ぜひこれからも過去の明智恭介シリーズを書き続けてほしいです。
明智恭介、フォーエバー!